映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』(ハリウッド実写版攻殻機動隊)感想
映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』を観てきました。
何でもアメリカではずっこけているというニュースを聞いていた中だったのですが、予告映像を見る限り、なかなかどうしてしっかりと「攻殻」していて個人的にはかなり期待して映画館へ。
字幕版と吹替え版の上映があり、選んだのは吹替え。
基本的に海外映画は吹替えを好んで観ます。そこにも理由はあるんですけど、そちらはまたの機会に。
では内容について。
序盤、その映像世界にテンション上がる!
冒頭、主人公である少佐・ミラ(スカーレット・ヨハンソン)の体が成形されていく様子はアニメ『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』を忠実に再現されています。それは感動を覚える位に!
そして映し出される舞台となる街並み。
こちらは原作に寄せてはおらず、まんま『ブレードランナー』のリメイク都市ですね。
巨大ホログラムがやや下品に映し出される都市。
いいです! いいんですよ!!
このクリーンさのない、下品な雑多感。これこそサイバーパンクの世界観です。個人的に感じている事なんですが、iPhoneはじめ、アップル製品ってサイバーパンク感無いですよね。クリーンなイメージや単一感がそう感じさせるのでしょうか。スマホはAndroid、OSはWindowsっていうのがサイバーパンクっぽいです。雑多で下品な感じ。
すみません、関係の無い話でした。
そして、戦闘シーンへ。
大統領?達の会食の場。で、ハッキングされたAIロボットによる襲撃現場に乗り込むシーン。
アニメ攻殻シリーズでもお馴染み、ビルの屋上より少佐が飛び降り、光学迷彩を施してガラスぶち破り突入!!
光学迷彩のノイズ混じりに壁伝いに走りながら銃をぶっ放すシーンは予告編にも収められていて、まさにそのシーンを観て「これは!!」と期待を膨らませたのですが、やっぱりカッコイイ!!
と、序盤はその映像世界をかなり楽しむことができました。
お話は押井守版『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』にアニメのいい所を切り貼りしてうす~く薄めた感じ
中盤以降、なかなか観続けるのに忍耐の必要な展開が続きます。
話の内容は改めて書く必要も無い程度のもの。押井守版『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』にそって進みます。
人形遣いがクゼという名の男に変更。これはアニメ2nd GIGからの設定流用ですね。少佐の元恋人という設定も継いでいます。そこについては改悪ともなんとも思わないのですが、問題は今作品にも押井守版『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』にも共通する「電脳義体化した少佐のアイデンティティ」へのアプローチ方法。
この部分を押井版もその他アニメ版も「ゴースト」というあるのか無いのかよくわからない存在をベースに描いていきます。自分もここであるのかないのかと曖昧な事を言っている以上、よくわからないままアニメ版は話を展開させていくのですが、よくわからないから悪いという理屈にはならないのだと今回気が付きました。
実写版『ゴースト・イン・ザ・シェル』では、ゴーストというワードは継承しつつも、少佐のアイデンティティに踏み込む際、すっごくわかりやすく記憶の改竄を持ち出します。
電脳義体化にあたり、少佐の過去の記憶を書き換えた。という所から話が進んでいきます。
これはわかりやすい!
「偽物の記憶を持った入れ物は何者か?」
という具合です。けどそれは面白くないですよね。結論が出てしまっている。
偽の記憶を持った入れ物は、私ではない。
そして記憶を捏造した者は悪者です。
電脳空間での意識の並列による個と他の境界の希薄化と言った、まぁよくはわからないけどありそうな所から、すっごく分かりやすい記憶の問題にすり替えたのは確実に物語の深みを損なっています。
そして第一の敵役。今作品でのクゼは電脳義体化実験の失敗による犠牲者として、実験を行った企業への個人的復讐のためにテロを繰り返します。
やはり個人的復讐という部分に共感はあまり持てませんよね。実は情報の海の中からポッと生まれたゴーストそのものでしたという押井版「人形遣い」は一度置いておいて、S.A.Cの「笑い男」や2nd GIGの「クゼ・ヒデオ」のように理想に生きたキャラクターと並べるとどうしても安っぽい。
そして今作の真の敵に当たるハンカ・ロボティクス社(少佐、クゼに電脳義体化実験を行った企業)の連中も、その目的が社のため、純粋な科学的好奇心のためと、アツくなる理由で行動しているわけではないので魅力がないです。
そう、合田一人にはカッコよさがあった!!
とまぁ、残念な内容になっています。
キャスティング
キャスティングについて、はじめ予告映像を見たときにスカーレット・ヨハンソンの少佐役は納得だったんですよ!
これぞ少佐! と思ったのです。
けど、実際に本編をずっと見ているとしんどくなった。。。
なんというか、可愛くない。。。
スカーレット・ヨハンソンに向かって可愛くないなんて言ったら、じゃあ誰なら良かったんだ!と怒られそうですが。何か、ゴツいんですよ。
いや、少佐なんて作品世界では「メスゴリラ」ですから!!
ゴツいのが少佐なんですけど、、、ねぇ、、、
本当は正解! けど気持ち的にNO!! と叫びたい気分です。
あとはたけしさんの荒巻はアニメとのイメージに随分ギャップがありますが、凄く良かったです。ただ吹替え版では全編日本語をしゃべるたけしさんには英字幕が付くのですが、そこは日本語で出して欲しかった。
それくらい、何言ってるか分かりませんでした。滑舌の問題。
けど銃撃戦は最高にカッコ良かった。
よかった点
結構文句を書き連ねてしまいましたが、良かった部分ももちろんあります!
まずは予告映像!
ぶっちゃけこれを観ればこの映画のいい所の8割方は収まっていると言えるほどいいです。あれ、これ褒めてない??
後は少佐が、第一の襲撃事件の際にハッキングされたロボットに電脳ダイブするシーンがあるのですが、あそこはなかなか興味深かったです。
バトーに逆ハックの心配をされながらもダイブする少佐。
こういうシーンはアニメでもよくあります。
そうしてバトーの心配通りに逆ハックを仕掛けられるのですが、その描写が凄まじい。波のように押し寄せる黒い人の群れに少佐が飲み込まれようとする映像。なんとも気色の悪い、不気味な映像の途中、なんとかバトーが救い上げるのですが、ダイブから戻った少佐はまるで何事もなかったかのように「居場所を掴んだわ」と立ち上がる。
そう、この感じ。この、ダイブから戻った瞬間の少佐の感じは何度も何度もアニメで見てきたのですが、今作のこのシーンほど、訳わからないモノへのダイブ、逆ハックの危険性を映像で伝えたものはなかったです。
毎度毎度バトーさんの焦る気持ちがやっとわかりました。
バトーさん、報われねぇ。。。
と言うのがハリウッド実写版『ゴースト・イン・ザ・シェル』の感想です。
個人的には残念な内容でしたが、結構好印象なレビューを見かけたりもしますので、相性の問題もあるのかもしれません。
あ、もう一つ良かった点。
作中に登場する車が、いかにも近未来的な流線型のボディではなく、かなり直線的デザインのものだったのが個人的に良かった!
少佐が跨るバイクも「HONDA」のロゴの自己主張が強いですが、かっこよかったです!!
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