映画『009 Re:Cyborg』感想

009 RE:CYBORG

 

2012年公開アニメ。監督は攻殻機動隊神山健治

フル3DCG作品。フル3DCGのセルアニメ仕上げという手法をとっているらしい。この映像がかなり良かった。アクションシーンのモーション、撮影、演出どれも迫力あって気持ちいい。

2012年時点でこの3DCG映像があったんだなと感心した。プロダクションI.G.の作品なのでこのあと2016年にスタートする「シドニアの騎士」の映像にもこの手法が受け継がれている。アニメ映画という視点で見れば、2016年公開の「楽園追放」よりもよっぽど優れていると個人的には感じた。

とにかくこの作品で話題の003(フランソワーズ)。しっかり可愛いです。そしてエロい。MMDMikuMikuDance)の様々なモデルを見ていても思うのですが、3DCGのキャラも悪くないですね。

 

監督・脚本は神山健治。009の原作にはあまり詳しくないのですが、この作品を見る限りでは神山っぽさ全開です。00ナンバーズが各国に属しているということから、ナンバーズの立場からくるアプローチや葛藤が描かれます。といっても主にはアメリカに属する002(ジェット)に関する部分ですが。

「世界の平和と自由を守ってきたのは俺たちアメリカ人だ!」「ちっぽけな専守防衛よしとするお前(日本)がふざけるな!!」(ジェット)

「それは世界にとっての正義だったのかな?」(ジョー)

のやり取りは「攻殻機動隊2nd GIG」で描かれそうで描かれなかったアイデンティティーとナショナリズムについて初めてキャクターが語っている。

 

お話自体は世界で多発する自爆テロ。それはみな「彼の声」を聞いた人間によるもの。「彼の声」とは? アフリカで発掘された天使の化石とは? 「彼の声」=「神」=「人間の集合無意識」と予想する008(ピュンマ)。人類の自浄(リセット)を促す「彼の声」に対し、その「彼の声」に抗おうとする意志の芽生えこそ、「彼の声」=「神」の求める導きだと009(ジョー)と002(ジェット)は自らを犠牲に放たれた核ミサイルへ対抗する。

 

結局「彼の声」がなんだったのか。「天使」とはなんなのか。この辺りが全くはっきりしないまま終わるのですっきりとはしないラスト。

さらには死んだはずの002、009が生きていてみんなでよかったねエンドはテレビ版「エヴァンゲリオン」級の投げっぱなし感満載。

ラストシーンの003が水の上を歩いている描写等から死後の世界説や、ジョーの妄想説などもあるらしいが、いくつかの演出からみても、どうも劇中とラストシーンが地続きの世界であるようには思えない。

実はこの作品、企画段階では押井が監督する予定だったらしい。その際に押井はお蔵入りした「ルパン三世 カリオストロの城」の設定の流用を考えていたようで、そこにヒントがあるような気がしないでもない。「ルパン三世は実は存在しない」というのが押井版「カリオストロの城」の一つのテーマだった以前どこかで見た気がする。

また、監督・脚本の神山から考えると「電脳世界」でのお話と思えたりもする。飛浩隆の「グラン・ヴァカンス」的な戦いの物語だったのかもしれない。

 

エンドロールのラストでは月の裏側に天使の化石が眠っている映像が流れ(そしてこれがとんでもなく巨大)、さらに物語は大きさを持ちそうではあるんだが劇場サイズではそこまで描き切る時間はなかったのだろう。

興味深い設定は数々散りばめられていたので、いつか完全版として3部作程で作ってくれないかなぁ思う。

批判意見が多いようでしたが、個人的には楽しめた作品でした。

 

当初、押井が監督を務める予定だったと書いたが、降番理由が「アパートに引きこもった003と犬になった001を連れて003が世界中を旅をする」「003は58歳設定」が通らなかったかららしい(笑)

ん~、実に押井らしいのだが、そりゃ通らんよ。

どんな話になっていたのか逆に気になるレベル。。。

 

 

 

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